大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)620号 判決

東京都中央区日本橋大伝馬町一丁目二番地の一二

上告人

日産農林工業株式会社

右代表者代表取締役

大西清忠

右訴訟代理人弁護士

吉森喜三郎

福岡県浮羽郡古川町古川一〇九三番地の一

被上告人

古川製材株式会社

右代表者代表取締役

江藤芳太郎

右当事者間の立木所有権確認等請求事件について、福岡高等裁判所が昭和二八年五月八日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉森喜三郎の上告理由(後記)第四点について。

原判決は、上告人が訴外堀江喜三郎に対し判示の協議成立に際し本件立木を「右訴外人の手において自ら他に売却」することを委ね、その趣旨に基いて右訴外人は本件立木を被上告人に売渡した事実を認定した上、他人の代理人たることを表示しないで、他人の物を自己の物として第三者に売渡す場合においても、その他人が右のような処分行為をすることに予じめ承諾を与えているときは、右売買は有効であつて、右売買と同時に買受人たる第三者は右物件の所有権を取得すると解するのが相当であるから、被上告人は本件売買によつて立木の所有権を取得したものであると判断したのであつて、この解釈は相当である。そして原判決引用の大審院判例もこの趣旨を示したものと認められるから、原判決はなんらこの趣旨に反したものではなく、これと異なる見解に立つて右判例の解釈を誤つたという趣旨の非難は当らない。従つて同じ独自の見解に基くその他の主張とともにいずれも採用することはできない。されば原判決には法則の適用を誤つた違法又は理由不備の違法は認められず、論旨は理由がない。

その他の論点について。

所論第二点第三点について、原判決は、本件立木は訴外堀江喜三郎が上告人に対する旧債務のため売渡担保に供したものであると認定したのに止まりこの売渡担保の合意解除についてなんら言及するところはない。しかるに所論はいずれも売渡担保の合意解除を前提として論議するのであるから、判示に副わない主張にほかならない。

また所論第一点第五点第六点は、原審の事実認定を非難するに過ぎないから、いずれも論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

昭和二八年(オ)第六二〇号

上告人 日産農林工業株式会社

被上告人 古川製材株式会社

上告代理人吉森喜三郎の上告理由

第一点 福岡県田川郡添田町落合字善城ケ岳より伐石峠に至る二千三百九十五番の五山林内に所在する杉檜立木約八千本此材積約六千石は立木法に基く登記を経てゐないものであるが、昭和二十六年三月二十日上告人はその所有者である訴外堀江真三から買受けて引渡を受け、上告人が所有者である旨を記載した木札を掲げて公示方法を施しておいたが、同年九月中旬に至り、被上告人が右山林地内に立入つて立木の伐採造材の作業をしてゐることを知つたので、立木所有権の確認と被上告人の侵害排除を求めると云うのが本訴の要旨であつて、これに対して被上告人は、訴外堀江は上告人に立木を売渡した事実はなく、同人が上告人に対して負担する債務約三百五十万円のために売渡担保に供したものに過ぎず、而も右売渡担保契約はその後同年六月中旬に合意解除になつて、堀江は立木を処分した上で約百十万円の内入弁済をする約束ができたから、同年七月五日被上告人は訴外有限会社石井製材所と共同して堀江から本件立木を買受けて所有権を取得した、と主張した。

原審はまづ、上告人が売買によつて本件立木の所有権を取得したと云う主張を排斥して「右訴外堀江が昭和二十六年三月頃同人の控訴会社(上告人)に対する旧債務のため売渡担保に供したもの」と認定した。この認定の資料となつたものは「乙第一号証の二、乙第六号証、原審証人堀江真三、同石井伝四郎、同佐々木伊三郎、同江藤貞芳の各証言、並びに同弓野克雄、同三宅繁夫の各証言の一部、右堀江の証言により成立を認めることのできる甲第二号証及び乙第一号証の一」である。そこで右証拠を調べてみると、乙第一号証の一、二は何れも堀江と被上告人及び有限会社石井製材所との間の立木売買契約書であつて、堀江と上告人との契約が売買か売渡担保かと云うことには全く無関係のものであり、乙第六号証には「深倉山(本件立木)は堀江に条件附きで売らせることを認めたが条件履行せざるため取り止めの事になつた」云々とあつて、これ亦上告人の取得した権利の内容を判断する資料にならぬものである。証人石井伝四郎、佐々木伊三郎、江藤貞芳等は何れも堀江が被上告人外一人と売買契約をする際の関係者であつて、堀江と上告人との契約が売買が売渡担保かを知る由もないし、従つて此の点に関する供述はない。証人弓野克雄、同三宅繁夫等の供述には却つて売買である旨の供述があつて、売渡担保であると述べた形跡はない。甲第三号証は堀江が前所有者山崎俊夫から買受けた立木を代金二百五十万円とし、伐採期間を新道路開通後三年の約束で上告人に売渡した旨の記載はあるが、債権担保のための売渡しである趣旨は微塵も認められない。只堀江真三は「昭和二十六年三月と思いますが証人が原告会社に伐採資金を借りに参りました、ところが原告会社としては……貸す訳にゆかないが自分の方にその伐採をさせてくれぬか資金は自分の方が出すが原告会社としては電柱材だけ取れば残りの短材は君の方で取つてよいと言う話があり、証人も仲々条件の良い話でありましたから承知しましたが、整理上その立木は売渡の形にしてくれと言う事で御示しの様な売渡証を作成したのであります。従つて売渡したのではなく一口に言へば負債の担保であります」(証人堀江調書第五項)と述べた。又「最初の話は立木は原告会社で伐つてやる、電柱材を取つた残りは証人にくれると言う様な話で、担保に入れたのも原告会社が電柱が欲しいから他に売らずに原告会社の方にくれと言う事であつたのであります」(同人調書第九項)と述べて居り、右供述の趣旨は上告人の投下する伐採事業資金を担保するために立木の信託譲渡を約束した、と云つてゐるものであつて、旧債務のために売渡担保に供したとは述べてゐない。このようにして原審が認定の資料とした全部の証拠を調べてみて、旧債務のための売渡担保であることを認めうる記載も供述もない。

右のように原判決は証拠によらないで上告人と堀江との間でなされた契約を売渡担保であると認定した違法があり、この違法は次でなされた売渡担保契約合意解除の認定に重大な影響を及ぼすものであるから、原判決は破毀せられねばならぬと信じます。

第二点 原審は前述の通り訴外堀江は上告人に対する旧債務のために売渡担保に供したものとなし、次で「同年六月十五日頃に至り……本件立木は右訴外人の手において自ら他に売却し、売却の上は右代金中から右旧債務のうちに百万円乃至百三十百円位の内入弁済をなし、残代金は右訴外人の自由処分にゆだねるとともに、右訴外人の所有する宮崎県下の山林を前記の残債務の担保に差入れることに一応協議まとまり、更に折衝の末堀江において右立木を売却して旧債務に内入弁済する額を百三十万円と確定し、且つ控訴人が先に本件立木の一部を伐採した費用十万円をも、右訴外人が本件立木を売却した代金中より弁済することを約したこと」を認定し、更に堀江は上告人から「与えられた本件立木処分の承諾に基いて昭和二十六年七月五日に」被上告人及有限会社石井製材所に代金二百八十二万円で売渡したことを認めた。右判文上では売渡担保契約の合意解除という文字は見えないが、正に合意解除についての方法条件を確定したものである。今原審の認定に従えば、上告人の権利に属する担保物件たる立木を売却した代金中から、合計百四十万円が上告人に入金になることと、宮崎県下にある堀江所有の山林(土地附)に改めて抵当権が設定せられることと、この二つが履行になつて始めて本件立木に対する担保権が消滅するものであつて、約束に不足する入金であつたり、宮崎県下の山林に抵当権の設定がなかつたりする間は、担保権は消滅せず立木所有権は上告人にあるものと謂はねばならぬ。そこで堀江は、第三者と売買契約を結んでも、上告人との約束を果さない限り所有権の移転も引渡しもすることが出来ないから、勢い上告人の知らぬ間に取引の完了ができぬ事になつて、担保権は保護せられることになる筋である。この理は譲渡担保として提供した登記のある不動産を債務者が売却することを約束した場合について見れば一層明らかである。売却について承諾を与え、売却代金の配分率を協定したばかりに、折角獲得した所有権が雲散霧消することはあり得ないと信ずる。原審は一方において売渡担保解除の契約について堀江の履行すべき義務の条項を認めながら、他方においては解除の方法を達するために立木処分の約束があつたからと云う理由で、堀江が条項の履行をしたかどうかに関係なく同人から買受けた第三者は直ちに右物件の所有権を取得するものとなし、担保権の消滅が被担保債務の先行給付が、少くとも同時履行の関係に立つことを看過した。原判決はこの点においても法律に違背したものであつて破毀を免れぬと信じます。

第三点 原審は上告人と堀江との間で売渡担保解除の約束が成立した時期について、「同年(昭和二十六年)六月十五日頃に至り……一応協議まとまり、更に折衝の末……旧債務に内入弁済する額を百三十万円と確定し、且つ……本件立木の一部を伐採した費用十万円をも……弁済することを約した」と判示したから折衝の末に約束の本極りになつた時期は六月十五日よりも後であると認めたことは疑いがないが、その日時は示してない。堀江が上告人から「立木処分の承諾」を与えられたと云うのは、一応協議の纏つた時期ではなく、その後更に折衝して約束の内容条項の確定を見た時期に、はじめて立木処分についての承諾があつたものと云はなければならぬ。が遅くともそれは同年七月五日堀江が立木を売却した日よりも以前であると認めたことは、上告人から堀江が「与えられた本件立木処分の承諾に基いて」売渡した旨の判文によつて明らかである。ところで原判決引用の証拠は勿論、全記録を精査しても、所謂売渡担保合意解除が昭和二十六年七月五日以前に成立したことの認め得る証拠は皆無である。却つて上告人が宮崎県に社員を派して山林の調査を遂げ、この価格を評定した上で堀江と協議を進め、本件立木の売却代金中上告人の取得分を合計百四十万円とすることにして堀江の申し入れに承諾を与えたのは、その意思決定をしたのが同年七月四日であり、これが堀江に到達したのは同年七月八日頃であつたことさえ認められる(甲第八号証、甲第九号証、証人三宅繁夫第一審調書第六項参照)。

原審は堀江が本件立木の処分について上告人の承諾を得た時期を確定するに該つて、充分な審理を尽さず、証拠に基かないで漠然とその時期が堀江の立木処分の日以前であるかのような認定をなし、理由不備の判決になつたものであつて、この点においても破毀を免れぬと信じます。

第四点 原審はその判決理由において「他人の代理人たることを表示せず、他人の所有物を自己の物だとして第三者に売渡す場合においても、その他人が右の如き処分行為をすることに予め承諾を与えておるときは、右売買は有効であつて、右売買と同時に右第三者は右物件の所有権を取得するに至るものと解するを相当とする」と云つて昭和十年(オ)第六三七号大審院判決を引用した。しかし、右引用の判決は、他人の権利を自己の名において処分した場合に、本人が後日その処分を追認したときは本人のために効力を生じ、無権代理を追認した場合と撰ぶところがなく、その本人の意思が処分をなした者の意思表示の効力をその当時に遡つて相手方との間に直接発生させようとするものであれば、表意者が本人のためにすることを示して意思表示をした場合と同じような効力を生ずる。と云う趣旨を明らかにしたものであつて、代理人が本人のためにすることを示さずしてなした意思表示が、事前に本人の承諾がある場合は、直接に本人に対して効力を生ずると判示したものではない。たとえ代理人と本人との間では、そのような諒解承諾のある場合でも、相手方に対して本人のためにすることを示さず、代理人が意思表示をした以上、民法第百条の規定によつて一応は代理人自身のためになしたものと看做されることには変りがなく、後日本人が追認した場合にはじめて、無権代理の追認に関する理論によつて、之れを本人のために効力を生ずたものと説いたものと思う。原審の云うように、代理人が相手方に対して本人のためにすることを示さず、之れを自己の名において意思表示をしても、事前に本人の承諾があれば常に直ちに本人のためにその効力を生ずることになつたのでは、社会の取引は混乱を来し民法第百条の規定は骨抜きになつて、却つて引用の大審院判決の趣旨に反することになる。繰り返して云えば、堀江が原審認定のように本件立木の処分について代理権を与えられてゐたとしても、上告人の代理人たることを示さず、上告人の所有物を自己の物として第三者に売渡したのであるから、そして第三者が、堀江にそのような代理権のあることを知つてゐたでもなく、又追認した事実もない本件では、堀江の売渡しによつて上告人が立木所有権を夫う理由はない。原審は意思表示の効力に関して法則の適用を誤つた違法があり、延ては上告人の所有権喪失の認定について理由を欠く判決ともなつて、この点においても亦破棄を免れぬと信じます。

第五点 上告人は原審において仮定再抗弁として要素の錯誤を主張した。上告人は堀江が色々と事情を訴えて本件立木を売らせて呉れと申し入れたのに対し、結局それでは売らせてやろうと承諾を与えたが、売らせると云う言葉の持つ意義は、不動産を処分しようとする際に所有者が世上一般に使い慣してゐる言葉の通り、堀江が本件立木の売物に出された話を各方面に持ち廻つて買受を希望する者を搜し求め、この者と上告人との間で売買を成立させるための斡旋を堀江にさせる、と云う意味に解して承諾したものであつて、堀江が代理人として直接に取引をしたり、或は堀江自身の所有物として第三者に売渡したりすることについて承諾を求められたものとは考えも及ばなかつた。果して堀江が売らせて呉れと云つた言葉の意義が被上告人の主張のような、又原審認定のようなものであつたとすれば、上告人はその意義を誤解し、世間並の方法で売らせるのだと思つて承諾を与えたのであるから、意思表示の要素の錯誤に該ると主張するものである。この上告人の主張に対して原審は、上告人の「提出援用に係る全立証によつても右の如き錯誤の存在することを認めることができないばかりでなく、前記各証拠によればかかる錯誤の存在しなかつたことを認めるに十分である」と云つた。しかし果して錯誤が存在せず、上告人は堀江が自分の手で、而も堀江の所有物件として売却することを承諾したものであれば、上告人が立木の権利を証する証書(甲第一、二号証)を堀江に渡すことなく、後生大事に保管して来た事実は何と見るべきであろうか、又堀江の奔走によつて売買成立の近いものと思うて、上告人の売渡証書を予め作成し、前述の甲第一、二号証と共にこれを上告会社中津出張所に廻付し、堀江が何時買主を差向けて来ても売買取引のできるようにして待機してゐた事実(甲第十一、十二号証、第二審証人三宅繁夫供述)を、信ずるに足らぬ芝居であると見て良いであろうか。抑々又、仮りにも数百万円の価値を有する立木を、それ相当の理由と必要があつて堀江の手から一応取り上げたからには、これを上告人が処分するに該つて、原審の認定するような広汎強力な権限を堀江に付与して、何のための立木権利の確保か意味をなさぬような処分方法を、甘んじて約束することか有るであろうか。最少限度において、上告人が売買成立の際に上告人の売渡が必要であり又、上告人の手裡にある前権利者の売渡証も併せて買主に交付する必要があると云う考えであつたことは記録に顕れた事実であつて、これを堀江が勝手に自分の物として売買取引をしても良いとして承諾を与えた積りで無かつた事は、認められねばならぬと思う。原審は之等の事実に目を蔽つて「右の如き錯誤は存在することを認めることができない」と上告人の抗弁を一蹴した。固より証拠の取捨事実の認定は原審の専権に属するところではあるが、それは充分な審理を尽した後の自由な心証に俟つと云うのでなければならず、審理を尽さず、明瞭な証拠や事実を看過し条理を無視した独断的見解のもとに判断を下すことは許されない。

原判決は、この点において審理不尽であり又判決理由が不備であつて、破毀を免れぬものと信じます。

第六点 原審は上告人と堀江との間でなされた立木処分に関する約束を判断するに該つて、その前後において「本件立木を右訴外人の手において自ら他に売却し、売却の上は右代金中から……弁済することを約したこと」を認定し、後段において「しかして右認定の如く他人の代理人たることを表示せず、他人の所有物を自己の物だとして第三者に売渡す場合においても、その他人が右の如き処分行為を為すことに予め承諾を与えておるときは、右売買は有効であつて、右売買と同時に、右第三者は右物件の所有権を取得するに至るものと解する」と説示した。原審が謂うところの、堀江に対して自分の手で自ら他に売却することの承諾を与えたとは、堀江が上告人の代理人でありながら上告人のためにすることを表示せず堀江の所有物件として自己のために第三者に売渡すことを具体的に明示して承諾を与えたと認定したものか、それとも堀江に立木の処分をすることについて承諾を与えたからには、同人が上告人の代理人として処分しようとも、或は自己の所有物件として処分しようとも随意であつて、この双方の場合を、当然に併せ含んで承諾したことになるという解釈に基いたものなのか、その何れであるかについて知ることができないが、若し前者であるとすれば、証拠によらずして事実の認定をしたものであつて、本件に顕れた証拠によつては、上告人が堀江に対し、同人の手で立木の売却をするについての承諾を与えたことは、或はこれを認め得ぬこともないかも知れぬが、原審の云うような特段な処分方法を具体的に明約して承諾を与えたという証拠は、全証拠を精査して何処にも見当らない。堀江自身の供述によつても「六月十五日頃と思いますが……本件の山を証人が売つてもよろしい、もし山が売れたら金を百万円か百二三十万円入れてくれとの話がありました」(同人調書第十二項)「証人が山を売るについては原告会社は何の関係もなくなつたのであります」(同第十三項)、「結局自分の物ですから証人が勝手に売買した訳であります」(同第十六項)「前述の様に原告会社が造材に来ないので他に売る事にしたと申しますのは、原告会社に売るのではなく他の人に売ると言う事であります」(同第十九項)「山の事については断じて君の方の山ではない自分の山だから拘束される必要はないと思う……と申しましたが」(同第二十三項)等々徹頭徹尾自分の権利であるから自分が処分したものである旨を強調したことは認められるが、上告人の代理人たることを表示せず、自己の所有物として売却することの承諾を得た趣旨の供述は微塵も認められず、その他の証拠は尚更のこと、此の点に関して原審認定の趣旨に副うものはない。若し後者の意味であるとすれば、原審は不当に当事者の意思を拡張解釈して本件に適用しようとするものであつて、上告人が堀江の手で売却することを承諾したからと云つても、立木の権利が上告人に属する以上、之れを処分するに際しては上告人の権利として処分するのが常道であつて、上告人の権利でありながら、殊更にこれを堀江の権利として処分するなどと云う異例な場合を承諾する意思が、当然に処分承諾の意思の内に含まれると断ずる訳には行かない。当事者は常に通常の場合を予想し、通常な意味合のもとに約束するものと見るべきである。原審の判決はこの点においても亦審理不尽理由不備の違法があつて破毀せらるべきものと信じます。 以上

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